Japanische Klassiker mit Furigana
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けいば
競馬
織田 作之助
Lesen Sie 競馬 (けいば) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.134 Zeichen · 24 Bildschirme
汽車の中で小倉の宿は満員らしいと聴いたので、別府の温泉宿に泊り、そこから毎朝一番の汽車で小倉通いをすることにした。夜、宿へつくとくたくたに疲れていたので、寺田は女中にアルコールを貰ってメタボリンを注射した。一代が死んだ当座寺田は一代の想い出と嫉妬に悩まされて、眠れぬ夜が続いた。ある夜ふとロンパンの使い残りがあったことを想い出した。寺田は不眠の辛さに堪えかねて、ついぞ注射をしたことのない自分の腕へこわごわロンパンを打ってみると、簡単に眠れた。が、眠れたことより、あれほど怖れていた注射が自分で出来て、しかも針の痛さも案外すくなかったことの方がうれしく、その後脚気になった時もメタボリンを打って自分で癒してしまった。そしてそれからは注射がもう趣味同然になって、注射液を買い漁る金だけは不思議に惜しいと思わず、寺田の鞄の中には素人にはめずらしい位さまざまなアンプルがはいっていたのだ。注射が済んで浴室へ行った時、寺田はおやっと思った。淀で見たジャンパーの男が湯槽に浸っているではないか。やあと寄って行くと、向うでも気づいて、よう、来ましたね、小倉へ……と起そうとしたその背中を見た途端、寺田は思わず眼を瞠った。