Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくはくき
竹柏記
山本 周五郎
Lesen Sie 竹柏記 (ちくはくき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.798 Zeichen · 91 Bildschirme
女が初めて愛した人のことは忘れられない、ということ、もうひとつは、ひとをあまり軽がるしく判断しないことです」
「それは、岡村八束をさすのですか」
「その人にしても、杉乃さんにしても」こう云って叔母は酒をすすめた、「――さあ、めしあがれ、せっかくの鮎が冷たくなってしまったでしょう」
孝之助はまもなく山荘を辞した。
彼と笠井杉乃との縁談には、叔母のほかにも反対する者があった。杉乃の兄であり、孝之助とは幼な友達の鉄馬も、その一人であった。理由は、彼女に愛人のあることで、孝之助もまえからうすうす知っていたが、そのために却って、結婚する決心を強めた、といってもよかった。
相手の岡村八束は、孝之助や鉄馬とおなじ年であった。さして美男というのではないが、少年じぶんから頬のややこけた、眼のきれいな、笑いかたに愛嬌のある、ひと好きのする顔だちで、いつもまわりの少女たちに、にんきがあった。……岡村はその藩で「番衆」というめみえ以上ではあるが、中の下くらいの家柄であって、八束は勘定奉行の払方に勤めていた。
高安は老職格で、父の良平は病臥するまで勘定奉行であった。孝之助もやがて、その職に就くわけであるが、父が倒れて以来、勘定奉行の元方(収納)支配をしている。