Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくはくき
竹柏記
山本 周五郎
Lesen Sie 竹柏記 (ちくはくき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.798 Zeichen · 91 Bildschirme
六の四
このあいだに自分はどうしたか。自分は杉乃を愛したし、今も愛している。杉乃を不幸や困難から護り、平穏な生活のなかに温ためようと思った。それらはどうやら実現した。これからもひどい蹉跌のない限り、この生活は続けてゆくことができるだろう。
――だがそれがいったいなんだ。
杉乃が自分の愛をよろこばないとすれば、自分の愛などはお笑い草ではないか。また人間は、必ずしも平穏無事な生活に、満足するものではない。貧苦や艱難にすすんでぶっつかり、それを打開することに、生き甲斐を感ずる者もいる。
――結局おれは臆病で退屈な人間にすぎなかった。
――帳尻を合わせる能だけの律義之助だ。
こんなときこそ、茶屋酒にでも酔い痴れることができたら、と思ったが、彼にはそれもできなかった。すっかりまいって、自分で自分をひきずるような気持で、家に帰った。
杉乃は出迎えなかった。
気分が悪いから、ということであった。孝之助はほっとした。いま妻と顔を合わせるのは彼にとっても辛かったのである。独りで着替えをし、食事を訊きに来た召使には、茶だけを命じて居間へ入った。
六の四
火桶をひき寄せ、机に凭れて、もの思いに耽っていたが、やっぱり酔っていたのだろう、そのままうたた寝をしたらしい、眼をさますと背に抱巻が掛けてあった。