Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくはくき
竹柏記
山本 周五郎
Lesen Sie 竹柏記 (ちくはくき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.798 Zeichen · 91 Bildschirme
その人とならどんな苦労をし、どんなにおちぶれても悔いはない、いっしょに死ぬなら、死んでも後悔はしないというくらいに思うものよ」
彼女は自分で注いだ盃を、大胆に飲みほして、きらきらするような眼で甥を見た。孝之助は黙って、やや長いこと、膝の上の自分の手を見ていた。
「私にもそれはわかるのですが」彼は低い声で云った、「――しかし、それだけだとは思えません」
叔母は次を待った。彼は続けた。
「どんな貧窮、どんな落魄もいとわない、よくそう云いますけれど、じっさいに落魄し、貧窮して、衣食にもこと欠くようになって、それで愛情だけが傷つかずにいる、ということは信じられません」
「孝さんはいま人を愛していて、それでそのことが信じられないの」
「そういう愛情が信じられないんです。この世は愛情だけでは生活ができないし、死ぬまでは生きなければならない、家庭をいとなみ妻子をやしなって、五年、十年、二十年、飢えず凍えず、家族そろって生きてゆくということは、そう楽なことではないと思います」
「まるで意見をされてるようなものね」
千寿はやや興冷め顔に、溜息をついた。
「そこまで考えたうえのことなら、わたくしにはもう云うことはないわ、ただこれだけは覚えていらっしゃい。