Japanische Klassiker mit Furigana
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わらうあくま
笑う悪魔
野村 胡堂
Lesen Sie 笑う悪魔 (わらうあくま) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.687 Zeichen · 55 Bildschirme
此手紙を読むと同時に、主人の顔色がサッと変って、それから態度が大事な客をして居ることをさえ忘れて、すっかり取乱してしまったことを、千種十次郎は思い出したのです。
手紙はすぐ主人の手に渡さるべきでした。が、新聞記者の本能が、ツイその象牙紙の素晴らしい封筒の外にハミ出して居る、レターペーパーの一部に、大きく左文字で「死」という字が透いて見えるのに囚えられてしまったのです。
同郷の先輩には相違ありませんが、自分の利益と宣伝のため以外には、千種十次郎の存在を認めない主人熊谷三郎兵衛に対して、素より良い感情を持って居る筈もなく、ツイ此拾った手紙の中に秘められて居る文句に、不思議な魅力を感じて、覗いて見ようと言った誘惑に打ち負かされたのも已むを得ないことでした。
千種十次郎は衣嚢の手紙を押えて、一歩廊下に、踏み出しました。が、其処には私服の警官らしいのと、熊谷合名の家の子郎党のうち、腕っ節の強そうなのが、銘々武器を隠し持って、素知らぬ顔で警戒して居るので、衣嚢の手紙を出して見ることなどは思いも寄りません。
フト思い付いて、手洗場の中へ千種十次郎は逃避しました。