Japanische Klassiker mit Furigana
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わらうあくま
笑う悪魔
野村 胡堂
Lesen Sie 笑う悪魔 (わらうあくま) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.687 Zeichen · 55 Bildschirme
が、コンクリートの土蔵の前には、厳然として二人の警官が頑張って居ります。宵に脅迫状を受取った時は、内心甚だあわて乍らも一応は一笑に付した熊谷三郎兵衛でしたが、令嬢の奈々子が二階の閉された部屋から、忽然として姿を消すと同時に、押し隠された恐怖心が、この逞しい実業家の神経を極度に焦立たせ、駆け付けて来た所轄署の警部に頼んで、二番目に狙われるだろうと思った、庭先の土蔵を、厳重に監視して貰ったことを思い出したのです。
「何んだ、――私も気が弱くなったぞ、――警官に見張をお願して居たことまで、すっかり忘れて居たよ、ハッ、ハッ、ハッハッ」
それは陰惨で洞ろで、虚脱したような笑いでした。一代に巨億の富を積んで、実業界で飛将軍と言われた三郎兵衛は、自分の取乱した態度を繕うために、日頃の剛腹と負けじ魂が蘇って、痩せ我慢の笑いを絞り出したのでしょう。
「でも、一応土蔵の中を拝見し度い、鍵はおありでしょうな」
花房一郎は主人の痙攣した顔を見つめました。
「鍵は秘書の本田が持って居る――おい、本田、本田は居ないか」
「ハイ、ハイ」
本田大助は飛んで来ました。
「土蔵を開けて、花房さんにお目にかけてくれ、――今日昼過ぎ晩餐会で使う銀器を出させる時までは、何んの変りもなかったのだな」