Japanische Klassiker mit Furigana
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わらうあくま
笑う悪魔
野村 胡堂
Lesen Sie 笑う悪魔 (わらうあくま) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.687 Zeichen · 55 Bildschirme
「あの美術品のことはどうなりまして?」
食事が済むと、香ばしいお茶を啜り乍ら、由喜子夫人は話します。
「飛んでもないことだ、俺が半世の努力と、熊谷家の財力の半分を注ぎ込んで集めた美術品を、ムザムザ博物館などに寄付してたまるものか」
熊谷三郎兵衛は角砂糖を二つ三つ続け様にお茶に落し乍ら以ての外の首を振ります。
「でも、博物館に寄付しなければ外国へ渡してやると言った期間が、あと二週間の後に迫って居るではありませんか」
「いや、登録された国宝や重美が、そう簡単に国外へ持出せるものではない」
「でも万一」
「いや、俺にはもっと良い宝があるのだ、――お前という美しい――」
熊谷三郎兵衛は年甲斐もなく椅子を寄せて、由喜子夫人の華奢な手を取ります。
「まア」
さすがに極り悪そうに、六十歳の醜怪な夫に手を取られた三十二歳の美しい夫人は、ほんのり顔を染めた時でした。
ワッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。
筒抜けに響いて来る悪魔の笑い、――薄寒い空から窓ガラスをビリビリ言わせて、皮肉で傲慢で、無作法で冷酷を極めます。
「畜生ッ」
熊谷三郎兵衛は下司な言葉を残して、廊下に飛出しました。