Japanische Klassiker mit Furigana
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こうもうけいせい
紅毛傾城
小栗 虫太郎
Lesen Sie 紅毛傾城 (こうもうけいせい) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.403 Zeichen · 50 Bildschirme
それが、嵐を前にした、ねつっこい静けさとでもいうのであろうか。いや、嵐を呼ぶ、海鳥の泣き狂う声さえ聞こえないではないか。
背後には、四季絶えず陰気の色の変わらぬ、岩柱の城がそそり立ち、灰色をした地平線の手前には、空の色よりも、幾分濃いとしか思われぬ鉛色の船体が、いとも眠たげに近づいてくるのである。
まこと、その二つのものは、冷たい海の上に現われた幻のように、それとも、仄暗い影絵としか思えないのだった。
しかし、味方は巧妙に舟を操って、あるいは水煙の中に隠れ、滝津瀬のようなとどろきを上げる、波濤の谷底を選り進んでは、軍船に近づくまで、いっこうに姿を現わさなかった。
そうしているうちに、真っ蒼に立ち上がってくる、山のようなうねりが押し寄せたと見る間に、その渓谷から尾を引いて、最初の火箭が、まっしぐらに軍船をめがけて飛びかかった。
ところが、その瞬間、砲声を聴くと思いのほか、意外にも、侘びし気な合唱の声が、軍船の中から漏れてきた。
そして、海に、人型をした灰色のものを投げ入れながら、そのぐるりを静かに回り始めたのである。それには、錫色の帆も砲門の緑も、まるで年老いて、冷たい眠りに入ったかのようであった。