Japanische Klassiker mit Furigana
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こうもうけいせい
紅毛傾城
小栗 虫太郎
Lesen Sie 紅毛傾城 (こうもうけいせい) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 25.403 Zeichen · 50 Bildschirme
序 ベーリング黄金郷の所在を知ること
ならびに千島ラショワ島の海賊砦のこと
四月このかた、薬餌から離れられず、そうでなくてさえも、夏には人一倍弱いのであるが、この夏私は、暑気が募るにしたがって、折りふし奇怪な感覚に悩まされることが多くなった。
ちょうどそれは、私の心臓のなかで、脈打ちの律動が絶えず変化していくように、波打つ暑気の峰と谷とだ。はっきりと、しかも不気味にも知覚されるのであった。
しかし、そうした折りには、家人に命じて庭先に火を焚かせ、それに不用な雑書類などを投げ入れるのである。それは、影像の楯をつくって、ひたすら病苦から逃がれんがためであった。
そのようにして私は、真夏の白昼舌のような火炎を作り、揺らぎのぼる陽炎に打ち震える、夏菊の長い茎などを見やっては、とくりともなく、海の幻想に浸るのが常であった。
ところが、ある一日のこと、ふとその炎のなかで、のたうち回る、一匹の鯨を眼に止めたのである。
そこで私は、まったく慌てふためいて、手早くを蹴散らしながら、取りだした二冊の書物があった。ああ、すんでのことに私は、貴重な資料を焼き捨ててしまうところだった。