Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.628 Zeichen · 371 Bildschirme
二十
………彼女は奥畑から手紙が来たことを雪子にしゃべりはしなかったであろうか。………
二十
悦子は帰って来た日一日だけ休んで、翌日から学校へ通い始めたが、幸子は二三日の間と云うもの、日が立つほどだんだん疲労が出て来るようなので、按摩を取ったり昼寝をしたりして暮した。そして退屈すると、ひとりテラスの椅子に腰かけて庭を眺めては時を過した。
ここの庭は、秋よりは春の花を好む女主人の趣味を反映しているのか、纔かに築山の蔭に貧弱な芙蓉が咲いているのと、シュトルツ邸の境界寄りに、一叢の白萩がしなだれている外には、今は格別人眼を惹くような色どりもない。夏の間に思いきり葉を繁らした栴檀と青桐とが暑苦しそうな枝をひろげ、芝生が一面に濃い緑の毛氈を展べている景色は、彼女が先日東京へ立って行った当時と大した変りはないのであるが、それでも幾分か日射しが弱くなり、仄かながら爽涼の気が流れている中に、何処からか木犀の匂が漂うて来たりして、さすがにこの辺にも秋の忍び寄ったことが感じられる。もうこのテラスに渡してある日覆いの葭簀張も、近日取り除けなければならない。―――彼女はそんなことを思いながら、いつも見馴れている我が家の庭を、この二三日はひどく懐しく眺めるのであった。