Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.628 Zeichen · 371 Bildschirme
いったいこの辺は、六甲山の裾が大阪湾の方へゆるやかな勾配を以て降りつつある南向きの斜面に、田園があり、松林があり、小川があり、その間に古風な農家や赤い屋根の洋館が点綴していると云った風な所で、彼の持論に従えば、阪神間でも高燥な、景色の明るい、散歩に快適な地域なのであるが、それがちょうど揚子江や黄河の大洪水を想像させる風貌に変ってしまっている。そして普通の洪水と違うのは、六甲の山奥から溢れ出した山津浪なので、真っ白な波頭を立てた怒濤が飛沫を上げながら後から後からと押し寄せて来つつあって、恰も全体が沸々と煮えくり返る湯のように見える。たしかにこの波の立ったところは川でなくて海、―――どす黒く濁った、土用波が寄せる時の泥海である。貞之助の立っている鉄道の線路は、その泥海の中へ埠頭の如く伸びていて、もう直き沈没しそうに水面とすれすれになっているところもあり、地盤の土が洗い去られて、枕木とレールだけが梯子のように浮かび上っているところもある。ふと貞之助は、足許に小蟹が二匹ちょろちょろ歩いているのを見つけたが、大方この蟹どもは今の小川が氾濫したので、線路の上へ逃げて来たのであろう。