Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.628 Zeichen · 371 Bildschirme
「只今」
と、玄関の方で庄吉の勢い込んだ声が聞えた。
「お母ちゃん」
と、隣室の悦子がけたたましく叫んだが、
「あ、帰った」
と、幸子も云った。そして次の瞬間には二人とも階段を駈け降りていた。
玄関が暗いので様子がよく分らないけれども、
「只今」
と云う庄吉のあとから、
「帰ったで」
と云う夫の声がした。
「こいさんは」
「こいさんもいるで」
夫が直ぐにそう答えたが、妙子が返事をしないのが気にかかるので、
「どうした、こいさん?―――どうした?―――」
と、幸子が土間を覗き込んだ時、お春がうしろから手燭をさしかけた。蝋燭の炎のゆらめきが、少しずつその辺の彼方此方を照らし出す中で、幸子はついぞ見馴れない、今朝出て行った時とは全く違う銘仙の単衣を着て、大きな瞳を一直線に此方に据えて立っている妙子を見た。
「中姉ちゃん、………」
と、妙子は感極まったような顫え声で云った途端に緊張が弛んだらしく、はあッと、喘ぎながら泣き出したかと思うと、倒れかかるように式台に顔を伏せた。
「どうした、こいさん?………怪我でもした?」
「怪我はせえへん」
と、又夫が答えた。
「………えらい目に遭うたけど、板倉に助けて貰うてん」