Japanische Klassiker mit Furigana
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みみこうすい
耳香水
大倉 燁子
Lesen Sie 耳香水 (みみこうすい) von 大倉 燁子 (おおくらてるこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.465 Zeichen · 29 Bildschirme
私は死人の方へ向いて一礼し、室を出ようとしました時、米松の粗末なベッドの脚のかげに小さい白いものが落ちているのをチラと見ました。急いで拾上げて見ますと、象牙細工の人形です。小指の先ほどしかない、小さいものですが、よく見ると、シルクハットを被っているシュバリエの立像でした。警察の人も殺人でないと定ったのでよく調べなかったと見えます。
余り小さくて、可愛く出来ているので、指先で弄っていますと、シルクハットが螺旋のようになっていてくるくると廻ります。廻しているうちにぽつりと、とれてしまいました。帽子は蓋だったのです。中には佳い香の煉香水が詰っていました。耳香水です。
私は小指の先につけて香を嗅ぎました。この匂は? ウビガンのケルクフルール? たった今謎が解けたはずのあの匂だったのです。私は妻君に耳香水を渡しながら申しました。
『こんなものが落ちてたんですよ。奥さん、あなたのですか?』
彼女は怪訝な顔をして見ていましたが、掌の中にしっかりと握りしめてしまいました。
茶の間に戻ってから、彼女はそれを夫の掌の上にのせて云いました。
『あの人が――、慌てて落して行ったんですよ』