Japanische Klassiker mit Furigana
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たんでき
耽溺
岩野 泡鳴
Lesen Sie 耽溺 (たんでき) von 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.597 Zeichen · 110 Bildschirme
あれからというものは、毎日毎日、この子の眼病の話で、心配は絶えやアしませんよ」まだ僕の同情を買おうとしているらしい。
「いい気味だ!」僕の心は、しかし、こう言ってよろこんだが、考えて見ると、僕の家には、妻もまた重い病気にかかっているのだ。菊子の病気を冷笑する心は、やがてまた僕の妻のそれを嘲弄する心になった。僕の胸があまり荒んでいて、――僕自身もあんまり疲れているので、――単純な精神上のまよわしや、たわいもない言語上のよろこばせやで満足が出来ない。――同情などは薬にしたくも根が絶えてしまった。
僕は妻のヒステリをもって菊子の毒眼を買い、両方の病気をもってまた僕自身の衰弱を土培ったようなものだ。失敗、疲労、痛恨――僕一生の努力も、心になぐさめ得ないから、古寺の無縁塚をあばくようであろう。ただその朽ちて行くにおいが生命だ。
こう思うと、僕の生涯が夢うつつのように目前にちらついて来て、そのつかまえどころのない姿が、しかもひたひたと、僕なる物に浸り行くようになった。そして、形あるものはすべて僕の身に縁がないようだ。
僕の目の前には、僕その物の幻影よりほか浮んでいない。