Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たんでき

耽溺

岩野 泡鳴

Lesen Sie 耽溺 (たんでき) von 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.597 Zeichen · 110 Bildschirme

Aozora Bunko

一

僕は一夏を国府津の海岸に送ることになった。友人の紹介で、ある寺の一室を借りるつもりであったのだが、たずねて行って見ると、いろいろ取り込みのことがあって、この夏は客の世話が出来ないと言うので、またその住持の紹介を得て、素人の家に置いてもらうことになった。少し込み入った脚本を書きたいので、やかましい宿屋などを避けたのである。隣りが料理屋で芸者も一人かかえてあるので、時々客などがあがっている時は、随分そうぞうしかった。しかし僕は三味線の浮き浮きした音色を嫌いでないから、かえって面白いところだと気に入った。

僕の占領した室は二階で、二階はこの一室よりほかになかった。隣りの料理屋の地面から、丈の高いいちじくが繁り立って、僕の二階の家根を上までも越している。いちじくの青い広葉はもろそうなものだが、これを見ていると、何となくしんみりと、気持ちのいいものだから、僕は芭蕉葉や青桐の葉と同様に好きなやつだ。しかもそれが僕の仕事をする座敷からすぐそばに見える。

それに、その葉かげから、隣りの料理屋の綺麗な庭が見える。燈籠やら、いくつにも分岐した敷石の道やら、瓢箪なりの――この形は、西洋人なら、何かに似ていると言って、婦人の前には口にさえ出さぬという――池やら、低い松や柳の枝ぶりを造って刈り込んであるのやら例の箱庭