Japanische Klassiker mit Furigana
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たんでき
耽溺
岩野 泡鳴
Lesen Sie 耽溺 (たんでき) von 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.597 Zeichen · 110 Bildschirme
その「可哀そうじゃアないか」は、青木を出しに田島自身のことを言っていたのだろうが、吉弥は何の思いやりもなく、大変強く当っていた。かの女の浅はかな性質としては、もう、国府津に足を洗うのは――はたしてきょう、あすのことだか、どうだか分りもしないのに――大丈夫と思い込み、跡は野となれ、山となれ的に楽観していて、田島に対しもし未練がありとすれば、ただ行きがけの駄賃として二十円なり、三十円なりの餞別を貰ってやろうぐらいだろう。と、僕には読めた。
「あたい、ほんとうはお嫁に行くのよ、役者になれるか、どうだか知れやアしないから」などと、かの女は言わないでもいいことをしゃべった。
「どういう人にだ?」
「区役所のお役人よ――衣物など拵えて、待っているの」
僕は隣室の状景を想像する心持ちよりも、むしろこの一言にむかッとした。これがはたして事実なら――して、「お嫁に行くの」はさきに僕も聴いたことがあるから、――現在、吉弥の両親は、その定まった話をもたらしているのだと思われた。あの腹の黒い母親のことであるから、それくらいのたくらみはしかねないだろう。
「どうせ、二、三十円の月給取りだろうが、そんな者の嬶アになってどうするんだ?」