Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たんでき

耽溺

岩野 泡鳴

Lesen Sie 耽溺 (たんでき) von 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.597 Zeichen · 110 Bildschirme

Aozora Bunko

思いやると、この放蕩おやじでも実があって、可哀そうだ。吉弥こそそんな――馬鹿馬鹿しい手段だが――熱のある情けにも感じ得ない無神経者――不実者――。

こういうことを考えながら、僕もまたその無神経者――不実者――を追って、里見亭の前へ来た。いつも不景気な家だが、相変らずひッそりしている。いそうにもない。しかしまたこッそり乳くり合っているのかも知れないと思えば、急に僕の血は逆上して、あたまが燃え出すように熱して来た。

僕は、数丈のうわばみがぺろぺろ赤い舌を出し、この家のうちを狙って巻きつくかのような思いをもって、裏手へまわった。

裏手は田圃である。ずッと遠くまで並び立った稲の穂は、風に靡いてきらきら光っている。僕は涼風のごとく軽くなり、月光のごとく形なく、里見亭の裏二階へ忍んで行きたかった。しかし、板壁に映った自分の黒い影が、どうも、邪魔になってたまらない。

その影を取り去ってしまおうとするかのように、僕はこわごわ一まわりして、また街道へ出た。

もとの道を自分の家の方へ歩んで行くと、暗いところがあったり、明るいところがあったり、ランプのあかりがさしたり、電燈の光が照らしたり――その明暗幽照にまでも道のでこぼこが出来て――ちらつく眼鏡越しの近眼の目さきや、あぶなッかしい足もとから、全く別な世界が開らけた。