Japanische Klassiker mit Furigana
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たんでき
耽溺
岩野 泡鳴
Lesen Sie 耽溺 (たんでき) von 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.597 Zeichen · 110 Bildschirme
「今の妻と吉弥とはどちらがいい?」と言う声が聴えるようだ。
「無論、吉弥だ」と、言いきりたいのだが、心の奥に誰れか耳をそば立てているものがあるような気がして、そう思うことさえ憚られた。
とにかく、多少の価うちがありそうな物はすべて一包みにして、僕はやとい車に乗った。質屋をさして車を駆けらしたのである。
友人にでも出会ったら大変と、親しみのある東京の往来を、疎く、気恥かしいように進みながら、僕は十数年来つれ添って来た女房を売りに行くのではないかという感じがあった。
僕は再び国府津へ行かないで――もし行ったら、ひょッとすると、旅の者が土地を荒らしたなど言いふらされて、袋だたきに逢わされまいものでもないから――金子だけを送ってやることに初めから心には定めていたので、すぐ吉弥宛てで電報がわせをふり出した。
二二
国府津では、僕の推察通り、僕に対する反動が起った。
さすがは学校の先生だけあって、隣りに芸者がいても寄りつきもしない、なかなか堅い人であるというのが、僕に対する最初の評判であったそうだ。が、だんだん僕の私行があらわれて来るに従って、吉弥の両親と会見した、僕の妻が身受けの手伝いにやって来たなど、あることないことを、狭い土地だから、じきに言いふらした。