Japanische Klassiker mit Furigana
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たんでき
耽溺
岩野 泡鳴
Lesen Sie 耽溺 (たんでき) von 岩野 泡鳴 (いわのほうめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 55.597 Zeichen · 110 Bildschirme
との忠告だ。
僕の妻は子をいだいて青くなった。
吉弥のお袋の出した電報の返事が来たら、三人一緒に帰京する約束であったが、そうも出来ないので、妻は吉称の求めるままに少しばかり小遣いを貸し与え、荷物の方づけもそこそこにして、僕の革鞄は二人に託し井筒屋の主人と住職とにステーションまで送られて、その夜東京へ帰って来た。
「憎いのは吉弥、馬鹿者はあなた、可哀そうなのは代りに行った芸者だ」と、妻は泣いて僕に語った。
その翌日から、妻は年中堪えに堪えていたヒステリが出て、病床の人となった。乳飲み児はその母の乳が飲めなくなった。その上、僕ら二人の留守中に老母がその孫どもに食べ過ぎさせたので、それもまた不活溌に寝たり、起きたりすることになった。
僕の家は、病人と痩せッこけの住いに変じ、赤ん坊が時々熱苦しくもぎゃあぎゃあ泣くほかは、お互いに口を聴くこともなく、夏の真昼はひッそりして、なまぬるい葉のにおいと陰欝な空気とのうちに、僕自身の汗じみた苦悶のかげがそッくり湛っているようだ。こうなると、浮薄な吉弥のことなどは全く厭になってしまった。
僕は独り机に向い、最も不愉快な思いがして、そぞろ慚愧の情に咽びそうになったが、全くこの始末をつけてしまうまでは、友人をも訪わず、父の家にも行くまいと決心した。