Japanische Klassiker mit Furigana
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しょっこうとびしょう
職工と微笑
松永 延造
Lesen Sie 職工と微笑 (しょっこうとびしょう) von 松永 延造 (まつながえんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.696 Zeichen · 144 Bildschirme
「今度の事件は少しばかり貴方にも関係があるように思えますし、屹度ミサ子は貴方に会いたがっているに相違ないのです。」之等の言葉の中には一つの怨恨も憤怒も含まれていなかった。それどころか、教員の眼の中には、澄んだ涙が湧き起って来て、私に憐れみを乞うている如くにさえ見えた。私は顫えて彼の肩に靠れ、進まぬ足で病院に向った。それから?
「さ、貴方の待っている人が来たよ。ミサ子!」と教員は悲愁の限りを尽して云った。けれども人事不省に落ちているらしい女性は眼を開く事が出来なかった。之は何たる急激な変化であろう。
教員は深い嘆息と共に、私の方を顧み、そして世にも哀れな面持で、語り継ぐのであった。
「聞いて下さい。おお、見て下さい。この凄じい痩せ方を! 家を出る時、たった一円八十銭しか持って居なかったミサ子は、それを全部出して、汽車の切符を買って了ったのです。何故汽車へ乗ったか? 何処かへ逃げる積りだったのか? そうではない。唯進退谷って、もう行き場がなくなったのです。世界は斯んなに広いのに……罪と痛みに追われる者は、その中に安心して住む所を見出し得ないのです。可哀相なミサ子! お前は何処か遠い停車場迄用もないのに乗り越しをして了った。