Japanische Klassiker mit Furigana
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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
Lesen Sie 肌色の月 (はだいろのつき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.706 Zeichen · 101 Bildschirme
「大阪行、一二九列車の二等車の網棚の上に……二等車の乗客の中に、宇野久美子のファンがいた。宇野久美子がスーツ・ケースを提げて入って来たので、宇野久美子だと思いながら見ていると、このスーツ・ケースを網棚に放りあげて、前部の車室に行ったきり、大阪駅へ着いても帰って来ない。それで車掌に、これは東洋放送の宇野久美子のスーツ・ケースだから、東京へ転送してくださいと頼んだというのです」
「開けてみたまえ」
木村はジッパーをひいて、スーツ・ケースの内容をさらけだした。灰銀のフラノのワンピースに緋裏のついた黒のモヘアのストール、パンプスの靴とナイロンの靴下が入っていた。
「つまり、これは宇野久美子がアパートを出るときに着ていたものなんだな」
「そうです。管理人の細君が確認しました」
「豊橋駅はどうだった」
「木谷刑事をやりましたが、ちょっと奇妙なことがありました。駅の広報係が、その汽車に乗り遅れたから、待たずに、先に行ってくれと、東洋放送の宇野久美子宛のアナウンスを依頼された。その女は、ナイロンのジャンパーに紺のスラックスを穿き、ベレエをかぶって、絵具箱を肩にかけていたというんです」