Japanische Klassiker mit Furigana
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はなこのちんじゅつ
花子の陳述
豊島 与志雄
Lesen Sie 花子の陳述 (はなこのちんじゅつ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.726 Zeichen · 22 Bildschirme
良吉さんは苦笑しながら言いました。
「なあに、京子というのは、ずっと前に亡くなった僕の女房ですよ。それが、今に生きているらしいと、美津子が言い張るんです。なにかの錯覚ですね。証拠をつきつけて、亡くなったことを信じこませることにしましたから、もう大丈夫です。御心配かけてすみませんでした。」
そして、実際、数日後に、良吉さんは美津子さんを説き伏せたそうでした。滋賀県の郷里に手紙を出して、京子さんの死亡のことやその戒名まで書き入れた返事を貰い、それを美津子さんに見せたのです。
これで、京子さんのことは済んでしまいましたが、あとが、へんな工合になりました。
誰か、しきりに自分のことを探索していると、美津子さんは言い出したのです。誰とも知れない者が、始終こちらを窺っていた。今何をしているか、寝転んでいるか、原稿を書いているか、そんなことを見極めたがっていた。往来に立ち止って、長い間こちらを見上げていることもあった。隣りの屋根の上から、こちらの室を覗いていることもあった。庇にのぼって来て、室内にはいり込もうとしていることもあった。それが、男の姿をしていることもあれば、女の姿をしていることもあるし、どこの誰とも分らないが、たしかに、一人ではなく、幾人かの相棒があるらしかった。