Japanische Klassiker mit Furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Lesen Sie 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.046 Zeichen · 104 Bildschirme
新橋はもう縁が切れている。ここに持っている五百円。あんなに耻をかかされて、手出しもならず。押しいただいて貰って来たのは、そもそも誰のためだ。玉子の殻がまだ尻ッぺたにくっついている水転のくせにしやがって、よくも一杯喰わせやがったな。胸糞のわるいこんな札びらは一層の事水に流して、さっぱりしてしまった方がと、お蔵の渡しの近くまで歩いて来て、じっと流れる水を見ていますと、息せき切って小走りに行過る人影。誰あろう、君香です。
「おい。おれだ。どこへ行く。」と呼留めた声はたしかに顫えていました。
「あら。兄さん。」と寄り添うのを突放して、「何が兄さんだ。ここにおれが居ようとは思わなかったろう。ざまア見ろ。男をだますなら、もうすこし器用にやれ。」
女は砂利の上に膝をついたまま立上ろうともせず、両方の袂で顔をかくし、肩で息をしているばかり。何とも言わないから、「おい、好加減にしな。」と進寄って引起そうとすると、君香は何か手荒な事でもされると思ったのか、その儘わたしの手にしがみつき、
「兄さん。気のすむように、どうにでもして下さい。わたし本望なのよ。兄さんに殺されりゃアほんとうに嬉しいのよ。