Japanische Klassiker mit Furigana
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くさのねもと
草の根元
宮本 百合子
Lesen Sie 草の根元 (くさのねもと) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.050 Zeichen · 3 Bildschirme
五時に近い日差しが、ガラス窓にうす黄色くまどろんで居る。
さっきまで、上を向いて見ると、眼の底から涙のにじみ出すほど隈なくはれ渡って、碧い色をして居た空にいつの間にかモヤモヤした煤の様な雲が一杯になってしまって居る。
桜が咲きかけて居るのに、晩秋の様な日光を見て居ると、何となくじめじめした沈んだ気になる。
暖かなので開け放した部屋が急にガランとして見えて、母が居ない家中は、どことなし気が落ちつかない。火がないので、真黒にむさくるしいストーブを見ながら、頬杖をついて、私はもう随分さっきから置いてきぼりにされた様な様子をして居る。
この頃漸々、学校の休になって、長い間かかって居たものを二三日前に書きあげたけれ共、それにつける丁度いい題に困りきって、昨夜も今もいやな思いをしつづけて居る。
書きたいだけ書いて、あとから名をつける癖のある私は、毎度こうした眼に会う。
いつもいつも物を考える時はきっとする様に、男みたいな額の角を人指し指と拇指で揉みながら、影の様にガラスの被の中で音も立てずに廻って居る時計だの、その前のテーブルの上に置いてある花の鉢だのを眺め廻す。