Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はなばなしきしゅんかん

華々しき瞬間

久坂 葉子

Lesen Sie 華々しき瞬間 (はなばなしきしゅんかん) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.114 Zeichen · 92 Bildschirme

Aozora Bunko

彼女は歩いている時、あちこちみてはいない。正しい歩調で、まっすぐ前を凝視しているが、もう無意識のうちに、そのポーズが身についていて、頭の中では種々考えているわけだ。

――あの人に四日も会っていないのだわ。私は不安。阿難が不安なのだ。さみしがっている。蓬莱和子と昨日一しょなのだ――

彼女は、放送会社の方へ歩く方針をかえた。その時、後から肩をたたかれた。

「阿難」

傍の喫茶店の奥まったところに二人は向い会って坐った。仁科六郎は、紡績会社へ二度程電話をした。二度とも彼女は不在であった。とにかくどうしても今日会わねばならないと思っていたのだ。阿難も又会いたかったのだ。

「会いたかったのよ」

「僕もだ」

「何故かしら」

「僕もわからない」

「でも、会ってほっとした」

「そうだ」

二人とも不安も疑惑も消えてしまっている。きく必要のないことはきかない。又云う必要のないことは云わない。これは仁科六郎の信条であった。南原杉子はちがう。彼女はきく必要がなくても相手の返答をたのしみたい。云う必要のない時も云ってみたらという好奇心がある。ところが阿難は、もう完全に仁科六郎を信じて疑わなかったから何も云わないのだ。