Japanische Klassiker mit Furigana
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とうじゅうろうのこい
藤十郎の恋
菊池 寛
Lesen Sie 藤十郎の恋 (とうじゅうろうのこい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.078 Zeichen · 25 Bildschirme
あの闇の中で、そなたと初めて手を取り合うとき、今少し逆上した風を見せてたもらぬか。女はあのようなときは、男よりも身も世もあらぬように逆上するものじゃほどにのう。
千寿 (素直に)あいのう、合点じゃ。今日は作者の門左衛門様も、御見物じゃほどに、一段心を込めてみますわいのう。
藤十郎 さあ、もう幕が開くに程もあるまい。
(千寿の手を取りて行かんとす。急に、楽屋が騒ぎ出す。「自害じゃ。自害じゃ。女の自害じゃ」と道具方や下回りの役者たち、役者の部屋の方へ駆け込む)
頭取 (あわてて駆け込みながら)ああ、声を立ててはならん。見物が騒ぎ出すと、舞台の方がめちゃくちゃじゃ。静かに、静かに。(皆の後から奥の方へはいる)
弥五七 (やっぱり道化方らしいやや上ついた態度で)はて面妖な。自害、しかも女の自害とは。楽屋には、牝猫一匹おらぬはずじゃがのう。
千寿 (同じく不思議そうに)女の自害! はて女の自害!
藤十郎 (思い当ることあるごとく、やや蒼白になりながら黙っている)……。
(道具方楽屋番など、お梶の死体を担いで来る。口々に「宗清のお内儀じゃ」という)
千寿 (駭いて駆け寄りながら)なに! 宗清のお内儀! (ふと気が付いたように、藤十郎の方を振り返る)……。