Japanische Klassiker mit Furigana
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にじのはし
虹の橋
久生 十蘭
Lesen Sie 虹の橋 (にじのはし) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.038 Zeichen · 30 Bildschirme
分娩後、間もなく母が死んだが、そのころは児童福祉法の里親制度といったようなものがなく、公共団体で保育をうけるほかはなかったので、あさひは小学校を終えるまで東京養育院の板橋本院に、その後は本院附属の授産場へ移って、メリヤス編みの技術をおぼえた。この間に女学校の二年級程度の学習をした。
十六歳の春、あさひは本院を出て「社会」に入ったが、戸籍の母の前科がついてまわり、そのためにいくどか苦い涙を飲みこんだ。刑務所で生まれた受刑者の娘などは、女中にさえ雇ってくれず、うまくもぐりこんだ気でいても、間もなく素姓が知れ、蹴りだすようなむごい仕方で追いだされた。
じぶんのもぐりこめる世界は、せいぜいダンサーか女給、ひょっとしたらそれもだめで、もっと暗い狭い穴へ落ちこむほか、生きる道がないのかも知れない。それならそれでもいいが、誰かを好きになって、結婚したくなったら、どうすればいいのだろう。あさひは暗澹たる前途を見透し、地獄へ墜ちる瞬間の光景を垣間見たひとのような悲愴な顔で、生きにくい東京という土地を離れる決心をした。
二十二年の秋、将来、こういうこともあり得るだろうと予想して、空襲直後のどさくさに、よその町内で貰った仮名の罹災者証明書を持って大阪へ行った。