Japanische Klassiker mit Furigana
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じゃせいのしゅうねん
蛇性の執念
大倉 燁子
Lesen Sie 蛇性の執念 (じゃせいのしゅうねん) von 大倉 燁子 (おおくらてるこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.981 Zeichen · 38 Bildschirme
大カバンを右手にぶら下げ、左手にも二つ三つの包を抱えていました。このアパートを借りた新客には違いないんですが、こんな相客は有り難くないと心に思いながら外へ出ました。
私は電車に乗ってからも、今見た男が気になってなりませんでした。何階にいるのか知ら、あんな人が隣室にでも引越して来たら、早速逃げ出してしまわなければならないなどと考えながら、銀座で電車を乗換えましたら今度は座席が空いていません。仕方なく入口に立っていますと三越前から一人の老婦人が乗りました。ふと顔を合せると、それは思いがけないお梶さんでした。
お梶さんは御木井家の老女で、文夫さんの乳母だった人でございます。文夫さんの亡くなったいまは主に綾子さんの世話をしていると聞いて居ました。ああした大家の奥向を取締っている女だけに、まことに上品で、私はどこかいいところの奥様かと思いました。先方でも逸早く私を見ると直ぐ傍へ来て、丁寧に頭を下げました。
『綾子さんもお身がお定まりになってようございましたね』
仕方なく、お祝いともつかぬこんなことを申しました。するとお梶さんは厭な顔をして凝と私を見て居ましたが、軈て不平そうに申しました。