Japanische Klassiker mit Furigana
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かえる
蛙
林 芙美子
Lesen Sie 蛙 (かえる) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.691 Zeichen · 6 Bildschirme
」
と呼びました。
より江は何かしらとおもって走ってゆきますと、昨夜のおじさんが、バナナの籠をさげて板の間へ腰をかけていました。お母さんはにこにこ笑って、
「わたしは、まァ、心のうちで泥棒じゃなかったかしらなんて考えていましたんですよ。」
といっていました。
おじさんは、新らしく来たこの県の林野局のお役人で、山から降りしなに径に迷ってしまって、雨で冷えこんで、腹を悪くしたといっていました。
「ほんとに、薬を飲んだときはやれやれとおもいましたよ。これはお土産ですよ。」
そういって、紐でくくった傘とバナナの籠を土間に置いて、より江の頭をなぜてくれました。より江はおじさんが、如何にもうれしそうに声をたてて笑う皓い歯をみていました。お母さんは自転車を洗い終ると、店先きの陽向に干して、おじさんに茶を入れて出しました。
「おや、雨蛙がいるよ。」
おじさんがひょいと股をひろげると、おじさんの長靴の後に昨夜の雨蛙が呆んやりした眼をしてきょとんとしています。より江は雨蛙をどこか水のあるところへ放してやろうとおもいました。そっと両手で挟さんで、往来の窪みへ置いてやりましたが、蛙は疲れているのか、道ばたに呆んやりつくばったままでいますので、より江はひしゃくに水を汲んでぱさりと、蛙の背中に水をかけてやりました。