Japanische Klassiker mit Furigana
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くものゆめ
蜘蛛の夢
岡本 綺堂
Lesen Sie 蜘蛛の夢 (くものゆめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 147.189 Zeichen · 298 Bildschirme
庭には夜露がもう降りているらしく、草履の音をぬすむには都合がよかった。
耳をすますと、がさがさという音は庭さきの空地の方から低く響いてくるらしい。前にもいう通り、ここは四目垣を境にしてただ一面の藪のようになっているので、人の丈よりも高いすすきの葉に夜露の流れて落ちるのが暗いなかにも光ってみえる。父は四目垣のほとりまで忍んで来て、息をころして窺うと、あたかもその時、そこらの草むらがざわざわと高く騒いで、忽ちにきゃっという女の悲鳴がきこえた。
女の声は少しく意外であったので、父もぎょっとした。しかしもう猶予はない。父は持っている枝をとり直して、四目垣をまわって空地へ出ると、草むらはまた激しくざわざわ揺れてそよいだ。すすきや雑草をかきわけて、声のした方角へたどって行ったが、ふだんでもめったにはいったことのない草原で、しかも夜なかのことであるから、父にも確かに見当はつかない。父は泳ぐような形で、高い草のあいだをくぐって行くと、俄かに足をすべらせた。露にすべったのでもなく、草の蔓に足を取られたのでもない。そこには思いも付かない穴があったのである。はっと思う間に、父はその穴のなかに転げ落ちてしまった。