Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こうもり

蝙蝠

岡本 かの子

Lesen Sie 蝙蝠 (こうもり) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.107 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

「かあいそうな、夕闇の動物」

お涌は、この小さい動物をいじらしいものに感じた。

「捕った捕った」

という声がして、その方面へ子供が、わーっと喚き寄って行った。桶屋の小僧の平太郎が蝙蝠の一ぴきを竿でうち落して、両翅を抓み拡げ、友達のなかで得意顔をしている。薄く照して来る荒物屋の店の灯かげでお涌がすかして見ると、小さい生きものは、小鼠のような耳のある頭を顔中口にして、右へ左へ必死に噛みつこうとしている。細くて徹ったきいきいという鳴声を挙げる。「ほい畜生」と云って平太郎は巧に操りながら、噛みつかれないように翅を延して避ける。ぴんと張り拡げられた薄墨いろの肉翅のまん中で、毛の胴は異様に蠢き、小鳥のような足は宙を蹴る。二つの眼は黒い南京玉のように小さくつぶらに輝いて、脅えているのかと見ると嬉しそうにも見える。またきいきいと鳴く。その口の中は赤い。

お涌は、何か、肉体のうちを掠めるむずむずしたような電気を感じ、残忍な征服慾を覚え、早くこの不安なものの動作を揉み潰してしまい度いような衝動にさえ駆られて、浴衣の両袂を握ったまま、しっかり腕を組み合せ、唇を噛んで見入っていた。