Japanische Klassiker mit Furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lesen Sie 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.970 Zeichen · 176 Bildschirme
しかし……いや、しかしも何もない、声の主を確かめさえすればよいのだ! ……しかし、それをするには、やっぱり襖をあけなければ……。
(咎められたら、部屋を間違えたと云えばよい)
頼母は、わざと無造作に襖をあけた。
「あッ」
声と一緒に、ほとんど夢中で、頼母は、庭へ飛び下り、これも夢中で抜いた刀を、中段に構え、切っ先越しに、部屋の中を睨んだ。
見誤りではなかった。帳内で灯っている燈の光で、橙黄色に見える紙帳が、武士の姿を朦朧と、その紙面へ映し、暗い部屋の中に懸かっている。
(林の中に釣ってあった紙帳だ。では、あの中にいる武士は、五味左門に相違ない。……先夜は、知らぬこととはいえ、同じ飯塚薪左衛門殿の屋敷へ泊まり合わせ、今夜は、同じこの旅籠の、しかも壁一重へだてた部屋に泊まり合わせようとは)
運命の不思議さ気味悪さに、頼母は、一瞬間茫然としたが、
(左門は親の敵、あくまで討ち取らなければならないのであるが、あの凄い腕前では……)
体の顫えを覚えるのであった。
しかし彼にとって、一抹の疑惑があった。紙帳は、左門ばかりが釣っているとは限らない。紙帳の中の武士は、左門ではないかもしれない……。