Japanische Klassiker mit Furigana
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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Lesen Sie 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.970 Zeichen · 176 Bildschirme
と叫ばれまして、その時以来、ずっとご乱心……」
「…………」
「そればかりか、お父様には、以前からお持ちの、腰の刀傷が元で、躄者に……」
「ナニ、躄者に?」と、叫んだかと思うと、薪左衛門は、腰を延ばし、ノッと立ち上がった。立てなかった。
「おおおお栞や、わしは躄者じゃ! ……躄者じゃ躄者じゃ、わしは躄者じゃ! ……ワ、わしは、イ、躄者じゃーッ」
時が沈黙のまま経って行った。天井裏で烈しい音がし、悲しそうな鼠の啼き声が聞こえた。こういう古屋敷の天井裏などには、大きな蛇が住んでいるものである。それが梁から落ちて、鼠を呑んだらしい。
時が経って行った。
薪左衛門の顔には、恐怖、悲哀、絶望、苦悶の表情が、深刻に刻まれていた。当然といえよう。乱心していたということだけでさえ、恥ずかしいことだのに、躄者にさえなったという。生まれもつかぬ躄者に。
薪左衛門は眼を閉じた。その瞼が痙攣を起こしているのは、感情を抑えているからであろう。栞の肩を抱いている手が、烈しく顫えているのも、感情を抑えているからであろう。
父の苦悶の顔を、下から見上げている栞の顔にも、恐怖と不安と悲哀とがあった。