Japanische Klassiker mit Furigana
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スペインけんのいえ
西班牙犬の家
佐藤 春夫
Lesen Sie 西班牙犬の家 (スペインけんのいえ) von 佐藤 春夫 (さとうはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.131 Zeichen · 15 Bildschirme
机には塵まみれに本が五、六十冊積上げてあって、別に四、五冊ちらばっていた。何でも絵の本か、建築のかそれとも地図と言いたい様子の大冊な本ばかりだった。表題を見たらば、独逸語らしく私には読めなかった。その壁のところに、原色刷の海の額がかかっている、見たことのある絵だが、こんな色はヰスラアではないか知ら……私はこの額がここにあるのを賛成した。でも人間がこんな山中にいれば、絵でも見ていなければ世界に海のある事などは忘れてしまうかも知れないではないか。
私は帰ろうと思った、この家の主人にはいずれまた会いに来るとして。それでも人のいないうちに入込んで、人のいないうちに帰るのは何だか気になった。そこで一層のこと主人の帰宅を待とうという気にもなる。それで水盤から水の湧立つのを見ながら、一服吸いつけた。そうして私はその湧き立つ水をしばらく見つめていた。こうして一心にそれを見つづけていると、何だか遠くの音楽に聞き入っているような心持がする。うっとりとなる。ひょっとするとこの不断にたぎり出る水の底から、ほんとうに音楽が聞えて来たのかも知れない。あんな不思議な家のことだから。