Japanische Klassiker mit Furigana
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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
Lesen Sie 貧しき人々の群 (まずしきひとびとのむれ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 59.959 Zeichen · 118 Bildschirme
肩の所に大きな鍵裂(かぎざき)のある女物の着物を着て、細紐で止めただけでズルズルと下った合せ目からは、細い脛(すね)がのぞいている。
延びたなりで屑糸のような髪には、木の葉や藁切れがブラ下り、下瞼に半円の袋が下って、青白い大きな目玉がこぼれそうに突出ている。紫色の唇を押しあげて、黄色い縞のある反っ歯が見え、鼻の両側の溝には腫物(はれもの)が出来て、そこら一体に赤く地腫れさせている。
身動きする毎に、魚の臭いや何やら彼やらがごったになって、胸が悪くなるような臭気をあたりにまき散らす。彼は「善馬鹿」という気違いなのである。もうかれこれ五六年前に、気が変になってからはこの村にある家へはよりつかずに、村中を廻って歩いて、行く先き先きで筵(むしろ)を一枚貰ってはその上に寝て暮しているのである。
どうかして気に入ったところがあると、幾日でも追い立てられるまでは、木蔭などにぼんやりすわって、犬の蚤を取ってやったり、自分がすわったまま手の届くだけ草を一本のこさず抜いたりしている。
犬がむしょうに好きで、あばれることなどはちっともないので、村の者共は彼の姿を見かけさえすると捕えて、罪なわるさをするのであった。