Japanische Klassiker mit Furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Lesen Sie 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.626 Zeichen · 45 Bildschirme
なんのことだかおみきにはわからない、どうしたんですかと訊くと、「しっ」と制止し、声をひそめて囁いた。
――静かにしな、千両の鶯だ。
――鶯ですって。
――とうとう手に入れた、ほら、鳴いてるだろう、あれが千両の囀りだ。
十兵衛は鴨居の隅を見あげ、いかにも嬉しそうに、その「鶯の声」に聞き惚れながら、おみきに向かって囁いた。
――これでやっと貧乏もおさらばだ。
それから今日まで、十兵衛は稼ぎにも出ず、寝るときと食事をする以外は、坐ったままじっと目笊を眺め続けている。ときには夜なかに起きあがって、心配そうに耳を傾け、すぐ安心したように独り頷いて、そのまま朝まで坐っている、などということもあった。おみきが稼ぎにいってくれるように頼むと、彼はけげんそうな顔をし、もうそんな必要はない、この鶯が売れればおれたちは一生安楽にくらせるんだ、と繰り返すばかりであった。
以上のことは差配の卯兵衛から聞いたのであるが、十兵衛の住居へゆき、去定が診察してみると、どこにも疾患と思えるところがみつからなかった。去定に促されて登も診た。登は竹造に提灯用の蝋燭を出させ、それに火をつけて十兵衛の眸子をしらべた。