Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅみのいでん
趣味の遺伝
Lesen Sie 趣味の遺伝 (しゅみのいでん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.235 Zeichen · 77 Bildschirme
ステッセルは降った。講和は成立した。将軍は凱旋した。兵隊も歓迎された。しかし浩さんはまだ坑から上って来ない。図らず新橋へ行って色の黒い将軍を見、色の黒い軍曹を見、背の低い軍曹の御母さんを見て涙まで流して愉快に感じた。同時に浩さんはなぜ壕から上がって来んのだろうと思った。浩さんにも御母さんがある。この軍曹のそれのように背は低くない、また冷飯草履を穿いた事はあるまいが、もし浩さんが無事に戦地から帰ってきて御母さんが新橋へ出迎えに来られたとすれば、やはりあの婆さんのようにぶら下がるかも知れない。浩さんもプラットフォームの上で物足らぬ顔をして御母さんの群集の中から出てくるのを待つだろう。それを思うと可哀そうなのは坑を出て来ない浩さんよりも、浮世の風にあたっている御母さんだ。塹壕に飛び込むまではとにかく、飛び込んでしまえばそれまでである。娑婆の天気は晴であろうとも曇であろうとも頓着はなかろう。しかし取り残された御母さんはそうは行かぬ。そら雨が降る、垂れ籠めて浩さんの事を思い出す。そら晴れた、表へ出て浩さんの友達に逢う。歓迎で国旗を出す、あれが生きていたらと愚痴っぽくなる。