Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅみのいでん
趣味の遺伝
Lesen Sie 趣味の遺伝 (しゅみのいでん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.235 Zeichen · 77 Bildschirme
正直と社会生活が両立するに至れば嘘は直ちにやめるつもりでいる。
「実際残念な事をしましたね。全体浩さんはなぜ嫁をもらわなかったんですか」
「いえ、あなた色々探しておりますうちに、旅順へ参るようになったもので御座んすから」
「それじゃ当人も貰うつもりでいたんでしょう」
「それは……」と云ったが、それぎり黙っている。少々様子が変だ。あるいは寂光院事件の手懸りが潜伏していそうだ。白状して云うと、余はその時浩さんの事も、御母さんの事も考えていなかった。ただあの不思議な女の素性と浩さんとの関係が知りたいので頭の中はいっぱいになっている。この日における余は平生のような同情的動物ではない。全く冷静な好奇獣とも称すべき代物に化していた。人間もその日その日で色々になる。悪人になった翌日は善男に変じ、小人の昼の後に君子の夜がくる。あの男の性格はなどと手にとったように吹聴する先生があるがあれは利口の馬鹿と云うものでその日その日の自己を研究する能力さえないから、こんな傍若無人の囈語を吐いて独りで恐悦がるのである。探偵ほど劣等な家業はまたとあるまいと自分にも思い、人にも宣言して憚からなかった自分が、純然たる探偵的態度をもって事物に対するに至ったのは、すこぶるあきれ返った現象である。