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Japanische Klassiker mit Furigana

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みなげきゅうじょぎょう

身投げ救助業

菊池 寛

Lesen Sie 身投げ救助業 (みなげきゅうじょぎょう) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.938 Zeichen · 12 Bildschirme

Aozora Bunko

巡査の前では頭を下げているが、老婆に改めて礼をいうものはほとんどなかった。まして後日改めて礼をいいに来る者などは一人もない。「折角命を助けてやったのに、薄情な人だなあ」と老婆は腹のうちで思っていた。ある夜、老婆は十八になる娘を救うたことがある。娘は正気がついて自分が救われたことを知ると、身も世もないように泣きしきった。やっと巡査にすかされて警察へ同行しようとして橋を渡ろうとした時、娘は巡査の隙を見て再び水中に身を躍らせた。しかし娘は不思議にもまた、老婆の差し出す竿に取りすがって救われた。

老婆は、再度巡査に連れられて行く娘の後姿を見ながら、「何遍飛び込んでも、やっぱり助かりたいものやなあ」というた。

老婆は六十に近くなっても、水音と悲鳴とをきくと必ず竿を差し出した。そしてまたその竿に取りすがることを拒んだ自殺者は一人もなかった。助かりたいから取りつくのだと老婆は思っていた。助かりたいものを助けるのだから、これほどいいことはないと老婆は思っていた。

今年の春になって、老婆の十数年来の平静な生活を、一つの危機が襲った。それは二十一になる娘の身の上からである。