Japanische Klassiker mit Furigana
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きんせいかいじんでん
近世快人伝
夢野 久作
Lesen Sie 近世快人伝 (きんせいかいじんでん) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 79.469 Zeichen · 157 Bildschirme
篠崎仁三郎氏が五十四の年の春であったか……腎臓病に罹って動きが取れなくなった。そこで自然商売の方も店員任せにして自宅で床に就いていたが、平常でさえ肥っていたのに、素晴らしく腫れ上ってまるで、洪水で流れて来たみたような色と形になってしまった。瞼なんか腫れ塞がってしまって、どこに眼があるのかわからない位で、そのままグングン重態に陥って行った。
枕頭に集まる者は湊屋の生前の親友であった魚市場と青物市場の連中ばかりで、一人残らず無学文盲の親方連中であったが、それでも真情だけは並外れている博多ッ子の生粋が顔を揃えていた。最早湯も水も咽喉に通らなくなって、この塩梅ではアト十日と持つまい……という医師の宣告を聞くと、一同の代表みたような親友中の親友、青柳喜平氏が二十四貫の巨躯を押し出し、篠崎仁三郎氏の耳に口を附けた。
「……オイ仁三郎……貴様はホンナ事に女房と思う女も、吾が後嗣と思う子供も無いとや……」
篠崎仁三郎は生前、妻子の事なんか一度も口にした事がなかった。しかし長崎に居た頃一人の情婦みたような女があってソレに女の児を一人生ませているという噂を、皆、聞いていたので、それを慥かめるために青柳喜平氏がこう聞いたのであった。