Japanische Klassiker mit Furigana
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うんめいのままに
運命のままに
豊島 与志雄
Lesen Sie 運命のままに (うんめいのままに) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.406 Zeichen · 57 Bildschirme
裏通りは大分泥濘っていた。私達は、肩を竝べるようにして歩いた。
「お苦しいことって何なの。」とお島は尋ねた。
「え、何が?」
「お手紙にあったこと。」
「何でもないんだよ。」
「でも私気になるわ。」
「ほんとに何でもないことだよ。ただね、僕がある女から捨てられたまでのことさ。」
「まああなたが?」といってお島は喫驚したような顔をして私を見守った。「それでどうなったの」
「それっきりさ。」
「どんな女の方?」
「どんなって……何でもないんだよ。」
「そう。」と云ってお島はそれ以上聞こうともしなかった。
私はそんなことをお島に云いながら、妙に気分が晴々としてくるのを感じた。然しそれは私の英子に対する、また私達の愛に対する、背反であったであろうか? 否私はそれを信じない。ただ私の前から一瞬間暗闘が消えて、私の心が柔かに落ち付いたのは事実である。そして私は和やかな眼でお島の姿を見やったのである。私は自らその気持ちをどう云っていいか言葉を知らない。
「何かたべようか。」と私は云った。
「私は何にもたべたくないわ。それよりか斯うしてお話していたいのよ。」
寒い空気が外套を通して感じられた。