Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
山本 周五郎
Lesen Sie 野分 (のわき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.401 Zeichen · 42 Bildschirme
「若さまのような御身分でも、ときにはそんなふうに、他人の暮しがよくみえるものでございますかね」
「爺さんにはわかるまいが、おれの暮しなんぞは……」云いかけたが、そこで又三郎は口を噤んだ、この老人の前で、自分などが生活のことを口にするのは、お笑い草だと思ったから。
その日は半刻あまりして帰ったが、五日と間をおかずにまた訪ねた。こんどはお紋がいた、風邪ぎみで昨日から休んでいると云ったが、彼を見るとえくぼをよらせながら元気に笑った。
「こないだはせっかくいらっしたのに、どうして帰るまで待っていて下さいませんでしたの、ずいぶん情無しでいらっしゃるのね」
「お紋の帰りなんぞ待っていたら、屋敷を抛り出されてさっそく路頭に迷ってしまうよ」
「あらうれしい、そうしたらここへいらっしゃいまし、若さまのお一人くらい」
「その先は云うな」藤七が脇から遮った、「……そんなせりふはいちにんまえの女の云うこった、それより三河屋と魚政へでもいって来な、さっき見たら活のいい鰡があったっけ、あいつの酢味噌と、なにか焼き物に椀というところでいこう」
「はい、でも若さまは張合のないほど肴には箸をおつけなさらないから」