Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のわき

野分

山本 周五郎

Lesen Sie 野分 (のわき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.401 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

上ったわ、それなのにお祖父さんはあんなひどいことを云って、あんなひどいことを」

「堪忍してくんな、わかっていたんだ、若さまの気持もおまえの気持も、おれにはよくわかっていたんだ、辛かったんだ、おれだって辛かったんだお紋」

「わかっていたんなら、なぜ、お祖父さん」

「若さまはいまお糸さんの云うとおり仰しゃった、他から奥方は貰うが、身も心もゆるす本当の妻はお紋ひとり、生涯変るまいと仰しゃったんだ」藤七は腰から手拭を取り、両の眼を押しぬぐいながらこう云った、「……だがお紋、おらあ考えた、本当の妻になって、生涯かわいがって貰えるおまえは、しあわせだろう、けれどもそれじゃあ奥方になって来る方が気の毒じゃあないか、お大名そだちだって人の心には変りはない筈だ、一生の良人とたのむ人が自分には眼も向けず、同じ屋敷のなかでほかの者をかわいがっているとしたら、お紋、おまえがその人だったとしたら、どうだ、悲しくも辛くもねえか、平気で一生みていられるか」

お紋は血の出るほど唇を噛みしめた。膝がしらが音のするほど震える、両手の拳を犇と握りながら、彼女は大きく瞠いた眼で、空の向うを見まもった。