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Japanische Klassiker mit Furigana

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のわき

野分

夏目 漱石

Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme

Aozora Bunko

金も勢もないものが天下の士に恥じぬ事業を成すには筆の力に頼らねばならぬ。舌の援を藉らねばならぬ。脳味噌を圧搾して利他の智慧を絞らねばならぬ。脳味噌は涸れる、舌は爛れる、筆は何本でも折れる、それでも世の中が云う事を聞かなければそれまでである。

しかし天下の士といえども食わずには働けない。よし自分だけは食わんで済むとしても、妻は食わずに辛抱する気遣はない。豊かに妻を養わぬ夫は、妻の眼から見れば大罪人である。今年の春、田舎から出て来て、芝琴平町の安宿へ着いた時、道也と妻君の間にはこんな会話が起った。

「教師をおやめなさるって、これから何をなさるおつもりですか」

「別にこれと云うつもりもないがね、まあ、そのうち、どうかなるだろう」

「その内どうかなるだろうって、それじゃまるで雲を攫むような話しじゃありませんか」

「そうさな。あんまり判然としちゃいない」

「そう呑気じゃ困りますわ。あなたは男だからそれでようござんしょうが、ちっとは私の身にもなって見て下さらなくっちゃあ……」

「だからさ、もう田舎へは行かない、教師にもならない事にきめたんだよ」

「きめるのは御勝手ですけれども、きめたって月給が取れなけりゃ仕方がないじゃありませんか」