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Japanische Klassiker mit Furigana

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のわき

野分

夏目 漱石

Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme

Aozora Bunko

ヴィーナスは浪のなかから生れた。この女は裾模様のなかから生れている。

日は明かに女の頸筋に落ちて、角だたぬ咽喉の方はほの白き影となる。横から見るときその影が消えるがごとく薄くなって、判然としたやさしき輪廓に終る。その上に紫のうずまくは一朶の暗き髪を束ねながらも額際に浮かせたのである。金台に深紅の七宝を鏤めたヌーボー式の簪が紫の影から顔だけ出している。

愛は堅きものを忌む。すべての硬性を溶化せねばやまぬ。女の眼に耀く光りは、光りそれ自からの溶けた姿である。不可思議なる神境から双眸の底に漂うて、視界に入る万有を恍惚の境に逍遥せしむる。迎えられたる賓客は陶然として園内に入る。

「高柳さんはいらっしゃるでしょうか」と女が小さな声で聞く。

「え?」と男は耳を持ってくる。園内では楽隊が越後獅子を奏している。客は半分以上集まった。夫婦はなかへ這入って接待をせねばならん。

「そうさね。忘れていた」と男が云う。

「もうだいぶ御客さまがいらしったから、向へ行かないじゃわるいでしょう」

「そうさね。もう行く方がいいだろう。しかし高柳がくると可哀想だからね」

「ここにいらっしゃらないとですか」