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Japanische Klassiker mit Furigana

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のわき

野分

夏目 漱石

Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme

Aozora Bunko

その中野君がわが不平を残りなく聞いてくれぬのは残念である。途中で夕立に逢って思う所へ行かずに引き返したようなものである。残りなく聞いてくれぬ上に、呑気な慰藉をかぶせられるのはなおさら残念だ。膿を出してくれと頼んだ腫物を、いい加減の真綿で、撫で廻わされたってむず痒いばかりである。

しかしこう思うのは高柳君の無理である。御雛様に芸者の立て引きがないと云って攻撃するのは御雛様の恋を解せぬものの言草である。中野君は富裕な名門に生れて、暖かい家庭に育ったほか、浮世の雨風は、炬燵へあたって、椽側の硝子戸越に眺めたばかりである。友禅の模様はわかる、金屏の冴えも解せる、銀燭の耀きもまばゆく思う。生きた女の美しさはなおさらに眼に映る。親の恩、兄弟の情、朋友の信、これらを知らぬほどの木強漢では無論ない。ただ彼の住む半球には今までいつでも日が照っていた。日の照っている半球に住んでいるものが、片足をとんと地に突いて、この足の下に真暗な半球があると気がつくのは地理学を習った時ばかりである。たまには歩いていて、気がつかぬとも限らぬ。しかしさぞ暗い事だろうと身に沁みてぞっとする事はあるまい。