Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme
但しこのほかに仕事はいくらでもする。新聞にかく、雑誌にかく。かく事においては毎日毎夜筆を休ませた事はないくらいである。しかし金にはならない。たまさか二円、三円の報酬が彼の懐に落つる時、彼はかえって不思議に思うのみである。
この物質的に何らの功能もない述作的労力の裡には彼の生命がある。彼の気魄が滴々の墨汁と化して、一字一画に満腔の精神が飛動している。この断篇が読者の眼に映じた時、瞳裏に一道の電流を呼び起して、全身の骨肉が刹那に震えかしと念じて、道也は筆を執る。吾輩は道を載す。道を遮ぎるものは神といえども許さずと誓って紙に向う。誠は指頭より迸って、尖る毛穎の端に紙を焼く熱気あるがごとき心地にて句を綴る。白紙が人格と化して、淋漓として飛騰する文章があるとすれば道也の文章はまさにこれである。されども世は華族、紳商、博士、学士の世である。附属物が本体を踏み潰す世である。道也の文章は出るたびに黙殺せられている。妻君は金にならぬ文章を道楽文章と云う。道楽文章を作るものを意気地なしと云う。
道也の言葉を聞いた妻君は、火箸を灰のなかに刺したまま、
「今でも、そんな御金が這入る見込があるんですか」