Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme
紅いは眼の縁を薄く染めて、潤った眼睫の奥から、人の世を夢の底に吸い込むような光りを中野君の方に注いでいる。高柳君はすわやと思った。
わが穿く袴は小倉である。羽織は染めが剥げて、濁った色の上に垢が容赦なく日光を反射する。湯には五日前に這入ったぎりだ。襯衣を洗わざる事は久しい。音楽会と自分とはとうてい両立するものでない。わが友と自分とは?――やはり両立しない。友のハイカラ姿とこの魔力ある眼の所有者とは、千里を隔てても無線の電気がかかるべく作られている。この一堂の裡に綺羅の香りを嗅ぎ、和楽の温かみを吸うて、落ち合うからは、二人の魂は無論の事、溶けて流れて、かき鳴らす箏の線の細きうちにも、めぐり合わねばならぬ。演奏会は数千の人を集めて、数千の人はことごとく双手を挙げながらこの二人を歓迎している。同じ数千の人はことごとく五指を弾いて、われ一人を排斥している。高柳君はこんな所へ来なければよかったと思った。友はそんな事を知りようがない。
「もう時間だ、始まるよ」と活版に刷った曲目を見ながら云う。
「そうか」と高柳君は器械的に眼を活版の上に落した。
一、バイオリン、セロ、ピヤノ合奏とある。