Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme
高柳君の心はまた豊かになった。窓の外を見ると鳶はもう舞っておらぬ。眼を移して天井を見る。周囲一尺もあろうと思われる梁の六角形に削られたのが三本ほど、楽堂を竪に貫ぬいている、後ろはどこまで通っているか、頭を回らさないから分らぬ。所々に模様に崩した草花が、長い蔓と共に六角を絡んでいる。仰向いて見ていると広い御寺のなかへでも這入った心持になる。そうして黄色い声や青い声が、梁を纏う唐草のように、縺れ合って、天井から降ってくる。高柳君は無人の境に一人坊っちで佇んでいる。
三度目の拍手が、断わりもなくまた起る。隣りの友達は人一倍けたたましい敲き方をする。無人の境におった一人坊っちが急に、霰のごとき拍手のなかに包囲された一人坊っちとなる。包囲はなかなか已まぬ。演奏者が闥を排してわが室に入らんとする間際になおなお烈しくなった。ヴァイオリンを温かに右の腋下に護りたる演奏者は、ぐるりと戸側に体を回らして、薄紅葉を点じたる裾模様を台上に動かして来る。狂うばかりに咲き乱れたる白菊の花束を、飄える袖の影に受けとって、なよやかなる上躯を聴衆の前に、少しくかがめたる時、高柳は感じた。