Japanische Klassiker mit Furigana
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かわぐちこ
野菊の墓他六篇
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓他六篇 (かわぐちこ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.105 Zeichen · 61 Bildschirme
予はことばをおしだすようにして、夏になればずいぶん東京あたりから人がきますか、夏は涼しいでしょう。鵜島には紅葉がありますか。鵜島まではなん里くらいありますなど話しかけてみたが、娘はただ、ハイハイというばかり、声を聞きながら形は見えないような心持ちだ。段ばしごの下から、
「舟がきてるからお客さまに申しあげておくれ」
というのは、主人らしい人の声である。飯がすむ。娘はさがる。
鵜島は、湖水の沖のちょうどまんなかごろにある離れ小島との話で、なんだかひじょうに遠いところででもあるように思われる。いまからでかけてきょうじゅうに帰ってこられるかしらなどと考える。外のようすは霧がおりてぼんやりとしてきた。娘はふたたびあがってきて、舟子が待っておりますでございますと例のとおりていねいに両手をついていう。
「どうでしょう、雨になりはしますまいか、遠くへのりだしてから降られちゃ、たいへんですからな」
といえば、
「ハイ……雨になるようなことはなかろうと申しておりますが」
という。予は一種の力に引きおこされるような思いに二階をおりる。
宿をでる。五、六歩で左へおりる。でこぼこした石をつたって二丈ばかりつき立っている、暗黒な大石の下をくぐるとすぐ舟があった。